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千の音で、群星に希望を

  • R1
  • 2024年9月21日
  • 読了時間: 18分

更新日:2024年11月29日

千の音で、群星に希望を


「今宵、魂は抱擁を交わす」

「そして、星々が反響する」



全世界6500億の開拓者の皆様、ごきげんよう。

原神同好会所属、ライターのR1です。今回はスタレの記事です。



※今回の記事には、崩壊:スターレイル ver.2.0「真夜中に夢を見るなら」からver.2.3「涙は目覚めの後で」までのメインストーリーに関するネタバレが、がっつり含まれます。

まだ見届けていない開拓者の皆様はご注意ください。

まだスタレを始めていない皆様は今すぐインストールしてください。





……大丈夫ですね? 始めますよ?




演武典礼で賑わう羅浮の地にて御集まりの皆様。


おい!! ピノコニーを覚えてるか???(クソデカボイス)


なにが演武典礼じゃ。まだ ver.2の中盤だっていうのにみーーんな羅浮に帰っちゃって……

皆あんなに!! ピノコニーを!! 楽しみにしてたじゃないですか!!!


今回はピノコニー最終章におけるボス、『哲学の胎児 サンデー』戦のBGM「翼の生えた希望」について語ります。

誰がなんと言おうと語ります。世間が演武典礼で賑わっていようと、巡狩なのかが可愛かろうと、飛霄将軍がくっそ強かろうと知りません。僕の列車にカウンターの文字はありません。クラーラも来ません。



歌詞から見ていきましょう。以下の文は、日英共に公式YouTubeチャンネルに投稿されている 【崩壊:スターレイル】EP「翼の生えた希望」 より引用しております。



We rise together as our destiny unfolds

定められた運命のもと 肩を並べて戦おう

We face the darkness and our trials are yet untold

迫る暗黒 試練はまだ終わっていない

Through the shadows of despair

絶望の影を通り抜けて

Oh, in silence, hopes we share

沈黙の中で 希望を分かち合おう

To chase our dreams that we've declared

言葉にした理想を ただ追いかけていけるように


We glimpse, through our eyes

もっと見ていたいのに

Yet fools, blind our sights

無知はこの目を覆ってしまう

Can't make what they say

理解し合えないのなら

We'll find our way, we'll find our way

自分の進むべき道を見つけるだけ

Heads up! The wheels are spinning

忘れないで! 運命の歯車は回り出してる

Across the plains, in valleys deep

平原を越え 峡谷を抜けて

To dawn, the wheels that sing

夜明けに向かって 歯車は回り 歌は響くの

An unending dream!

果てしない夢へ!

Heads up! Thе tracks are running

忘れないで! 軌跡は走り出してる

Across the plains, wherе shadows hide

薄暗い平原を抜けて

We run, we stride~

進もう! ひたすらに前へと


Heads up! A steady rhythm

さあ 顔を上げて! 力強いリズムと一緒に

A destination that's ever near

ゴールまであと少し

It comes! Stride to our kingdom

私たちの理想の地へ

And see the light of day

すべてを再び光で照らそう

Heads up! The wheels are singing

忘れないで! 運命の歯車は歌い出してる

The whispers and secrets they'd keep

苦痛と秘密を抱えていても

To hope! We bound~

私たちには希望がある


Break free, we chased our dreams, beneath the starry night

束縛を振り切って 星空の下で夢を追いかけよう

In the face of god, we rose, as one

神の前に 力を合わせて 未来に進もう


(引用終)


……良い曲ですね。

銀河一番の歓楽街、宴の星 または 夢の地:ピノコニーの成り立ちと、その裏で息をひそめていた成り立ち。「開拓」の遺志を継ぎ、ナナシビトの帽子を受けとって未来へと歩み出す主人公。そこから始まり、そして終わるひとつの夢。

すべてがつながり、歩み出すその一歩――――


(ピノコニーを思い出してしみじみ耽っている筆者をどうぞお楽しみください)









少しずつ、見ていきましょう。


We rise together as our destiny unfolds

定められた運命のもと 肩を並べて戦おう


unfold は fold(折りたたむ)に打消を意味する接頭辞、un- がついたものです。

直訳すれば『運命が unfold されてゆくにつれ、私たちは共に立ち上がる』。

ここで、崩壊:スターレイル自体が、そしてピノコニー編自体がひとつの「物語」であることが意味を成してきます。

unfold には開く、広がるといった意味のほか、先述した「un- 折りたたむ」から発展して「物語が展開する」といった意味があるのです。

そう、折りたたまれていたのは本です。開拓者である、あなた《私たち》が読む《踏み出す》ことで始まった、このピノコニーの物語。開拓者、アベンチュリン、ブートヒル、様々な視点で描かれた群像劇は、今ここに全員の意志が揃い、明日へと向かおうとするのです。

また「戦う」と訳されている rise は「立ち上がる」の他に「目を覚ます」の意味があります。つまりこの歌詞は「共に戦おう/目を覚まそう」と呼びかけているわけです


お分かりでしょうか。そうです。この歌、天才が作詞しています


次のパートに移りましょう。


We face the darkness and our trials are yet untold

迫る暗黒 試練はまだ終わっていない

Through the shadows of despair

絶望の影を通り抜けて

Oh, in silence, hopes we share

沈黙の中で 希望を分かち合おう


一行目の最後の untold は、先程の unfold と韻を踏んでいます。これは「莫大な」「計り知れない」の意を持つ形容詞です。

しかし、韻を踏んでいることによりもうひとつの意味が浮き上がってきます。それは動詞 tell から派生した、un-told という響きです。打消の un- を伴うことで、「まだ語られていない」をあらわします。では何が語られていないのか。これはピノコニーという物語の終幕を暗示していると捉えることが出来ます。公式日本語訳は、「莫大な」よりもこちらを重視したものとなっています。ですが、 untold にふたつの意味があることを加味して聞けば、このパートでは「私たちの試練は計り知れないほど大きく、そしてまだ終わっていない」と読み解くことが出来ます。

深読みしすぎだと思いますか? いいえ洋楽はこういうこと割と結構やります。日本語でもやるじゃないですか、米津〇師とかが。多分。


ところで今回の記事はずっとこの調子で、「翼の生えた希望」を読み解く回となります。飽きた人はブラウザの戻るボタンを押してください。特に受験生はとっとと戻りなさい。勉強に疲れたからって面白くもない記事を読む暇は無いだろ。面白いなら読み続けてくれるとうれしいです。この記事があなたの助けに、少しでもなれますように。


To chase our dreams that we've declared

言葉にした理想を ただ追いかけていけるように


ここはほとんど直訳に近くなっています。しかし注目すべき単語がひとつ。

declare の部分です。「言葉にする」と訳されているこの動詞、受験生は「宣言する」で覚えますね。覚えてない受験生は頑張りましょう。

「宣言する」にも色々あります。たとえば proclaim も「宣言する」で単語帳に載っていることが多いです。また announce や insist、disclose なんかも同じような意味で使うことができます。じゃあなんでワザワザ declare なのか。

The Declaration of Independence と聞いてピンと来ますでしょうか。これは「アメリカ独立宣言」を指します。ここで declare の名詞形である declaration が用いられています。

そもそもピノコニーは、某ネズミーランドを想起させるようなキャラクターやキャッチコピーを彷彿とさせることから分かる通り、とある時代のアメリカを着想元としています。


ピノコニーが選んだ時代背景の原型は、20世紀20年代から30年代にかけてのアメリカで、「狂騒の20年代」(ローリング・トウエンティーズ)とも称される時代で、第一次世界大戦後に経済社会が繁栄した「黄金の十年間」である。この時期は、カルビン・クーリッジ大統領の任期にちなんで、「クーリッジ繁栄」とも呼ばれている。

(※一部脱字と思われる箇所を修正しております)


今は「夢の地」と称されるピノコニーにも、暗い過去がありました。かつて、ピノコニーはスターピースカンパニーが設立した、アスデナ星系に位置する監獄でした。そこから沢山の人の夢と努力と――――あとなんか色々とややこしい陰謀とかも経て―――今の美しい歓楽街へと発展を遂げたのです。詳しくはメインストーリーとかサブクエとかを読み込みましょう。

僕らが知るアメリカも、ヨーロッパからの入植が始まりです。先住民とかそのあたりの諸々は、ちょっとややこしいので今は置いておきます。ややこしい対立から逃げてきた清教徒たちは、財産とか後ろ盾とかそういうもの一切無しで、文字通り辺境であったアメリカ大陸に上陸し――――今や、ご存知の通りです。クロックボーイを始めとするクラークフィルムの仲間たちも某Dランドを想起させる作風(Rubber Hose Animationと呼ばれます)です。


その国でいちばん有名な “declare” といえばアメリカ独立宣言なんですよ。


分かりますか、この凄さが。分かってほしい。

ピノコニーを見届けた開拓者の皆様はご存知でしょう。あれは、神になろうとしたひとりの人間による「救済」から抜け出し、甘い夢から覚めて冷たい現実へとみずから羽ばたくための一戦でした。

ここでアメリカ独立宣言から、一部引用します。


We hold these truths to be self-evident, that all men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty and the pursuit of Happiness.

我々はこれらの真実を自明のものと考える。すべての人間は創造主によって平等に造られ、侵されることのない権利を有している。この権利とは「生きること」「自由であること」「幸福を追求すること」などを指す。(翻訳:R1)


「ハルモニア聖歌隊」ディエス・ドミニ またの名を 哲学の胎児。

第三フェーズを思い出してください。

「初めに言葉ありき」「一日目、『真実』を授け」「二日目、『暦法』を授け」「三日目、『言語』を授け」……「七日目、『尊厳』を授け…『初めに行為ありき』を見届けよ!」

これらから想起させられるものは何でしょう? そうですね、某一神教における創世神話です。ざっくり説明したいので、ここでは「キリスト教」とします。色々と言いたいことがあるかたは是非ご自身で調べたり発信したりしてください、ここは大学の講義室じゃないし、僕も宗教学や歴史学を専攻しているわけではありません。一般的な知識……よりはちょっとだけ英単語や宗教関連用語に詳しい、ごく普通の大学生が書いている文章と思って読んでください。良いですね?

キリスト教において「初めに言葉ありき」というフレーズはばっちりそのまま出てきます。ヨハネによる福音書を読んでください。1;1なので冒頭すぐです。そもそもサンデー氏がキリスト教モチーフだったりします。「神は六日で世界をつくられ、翌日御休みになられた」、この翌日すなわち「七日目」が「安息日」と呼ばれ、今の「日曜日」へと繋がっています。詳しくはお近くの司祭様に聞いてください。ついでにディエス・ドミニという名前もキリスト教関連のものです。Dies Domini、1998年に教皇ヨハネ・パウロ二世が公布した書簡のタイトルで、The Lord's Day — as Sunday was called from Apostolic times という書き出しで始まります。訳するなら「御主の日――日曜日というものは、使徒たちの時代からこう呼ばれていました」あたりでしょうか。ばっちり日曜日ですね。要約すると日曜日大事だよっていう話が書かれています。長いけどインターネット上で読めるので興味があるかたはどうぞ。

閑話休題。

アメリカ独立宣言にて言及されていた「創造主」は、一般名詞 creator ではなく、固有名詞 Creator として表記されています。つまりこれは一神教における主のこと。そして先述した通り、日曜日とは神の日です。

まさに「開拓」の精神のもと黄金期を迎えたアメリカを彷彿とさせる宴の星、ピノコニーにて、植民支配どころではない、「主」からの独立を目指す開拓者たちにぴったりの動詞ではないでしょうか。ここに declare をあてたのは天才の所業としか言えません。喝采。


長くなってしまいました。歌詞に戻りましょう。


We glimpse, through our eyes

もっと見ていたいのに

Yet fools, blind our sights

無知はこの目を覆ってしまう

Can't make what they say

理解し合えないのなら

We'll find our way, we'll find our way

自分の進むべき道を見つけるだけ


glimpse は「印象深い一瞬」のこと。動詞でも使われます。

注目すべきは二行目の fool です。「無知」と訳されています。特に問題は無い、むしろ上質な意訳といえる箇所ですが、ここにもうひとつ文脈を見出すことができます。

ピノコニーにて登場したブラックスワンは「アルカナ」を駆使する特殊なデバッファーでした。また、開拓者《わたしたち》は彼女から手渡された一枚のタロットカードをきっかけに、夢から覚める道へと歩み出します。この時のカードはゼロ、すなわち「愚者 The Fool」のカードでした。愚者といえば「仮面の愚者」である花火様のことも頭に浮かぶでしょう。開拓クエストのタイトルを覚えていますか? そう、「愚者は二度鐘を鳴らす」。ver.2.3序盤で使われていました。またタロットカードにおける「愚者」は、ただ愚かな者という意味ではありません。愚者のカードには、崖だと知りながら先へと歩みを進める人間の絵が描かれています。これが示すのは「冒険」や「物事の始まり」。先をおそれず、前に進めるという非常に「開拓」な意味を持っています。ちなみにタロットカードの大アルカナはゼロ番である「愚者」から始まり、21番の「世界」で終わります。「世界」は「完成と完全」を意味するのですが、「愚者」はそこから歩き出すことができる……とされています。「冒険」に始まり「完成」を迎えた世界は、もう一度ゼロから始まっていくのです。

もういっこオマケで添えておくと、「世界」のひとつ前のカードは20番の「審判」。ver.2.1(だったかな?)でサンデー氏は、ロビンの死の報を聞いてこう言っていました。「まだその時ではありません。運命の日が来たら、ワタシは必ず公正に審判を下しましょう」。天環族であるサンデー氏は、後頭部に環を、耳の後ろに羽を持っています。その姿はさながら天使のようです。タロットカードの「審判」には、裁きの日を迎えラッパを吹く天使が描かれます。断言します。多分これ全部考えられてます。スターレイルすごいね。


長々と書きましたが、やっとサビです。


Heads up! The wheels are spinning

忘れないで! 運命の歯車は回り出してる

Across the plains, in valleys deep

平原を越え 峡谷を抜けて

To dawn, the wheels that sing

夜明けに向かって 歯車は回り 歌は響くの

An unending dream!

果てしない夢へ!

Heads up! Thе tracks are running

忘れないで! 軌跡は走り出してる

Across the plains, wherе shadows hide

薄暗い平原を抜けて

We run, we stride~

進もう! ひたすらに前へと


あ~~!! たのし~~!!

この、何と言いましょうか、「勝ち確BGM」のようなこのサビ。何度聞いても素晴らしいですね。ここまでピノコニーの辛い過去、悲しい過去もすべて見てきて、それでもなお明日を迎えに行く開拓者たちの決意と輝きが……こう……とても良い……。単に「顔を上げて!」と訳してしまいそうな Heads up を「忘れないで!」と表しているのも大変素敵です。「!」の勢いを活かした、見事な意訳と言えます……あの、これ本当に無料で見ちゃっていいんですか? ローカライザーに金払わなくて良いの???

さて、解釈に移りましょう。

ここにもタロットカードが隠れています。The Wheel、正確にはThe Wheel of Fortune。大アルカナの11番にあたります。流転する「運命の輪」のカードで、描かれているのも文字通り「運命の輪」です。モチーフは車輪です。転がり、乗っている者たちを先へと連れて行くものとして扱われます。

しかし、次のフレーズは「平原を越え 峡谷を抜けて」。これは一体どういうことか。

もう一度、ピノコニーの原点に立ち返りましょう。ここは概念的な「開拓のアメリカ」です。であれば、「平原を越え、峡谷を抜けて」まわる車輪といえばひとつだけ。大陸横断鉄道です。この「運命の輪」は、wheel というたった一言で、大陸横断鉄道を想起させるのです。東西に大きく広がる大地を横切る鉄道。海岸沿いから発展したアメリカにおいて、大陸の端と端を繋ぐ大陸横断鉄道はまさに「開拓」の象徴であり、世界を大きく変えるものでした。そして崩壊:スターレイルにおいて、開拓の鉄道といえば。

星穹列車です。我らが星穹列車は、開拓の精神にもとづいて星々を、銀河を巡りました。その足跡は確かにピノコニーにも残り、ミハイル、ラザリナ、ティエルナンという三人から始まった流れは、今や辺境の星を「夢の地」にまで押し上げました。その地を、「秩序」に閉じ込めさせないために。美しい「調和」を取り戻すために。開拓者《わたしたち》は、今一度この星に、「開拓」の想いを走らせるのです。

その結果があの、星穹列車ダイレクトアタックなのは正直感動どころじゃないよ。でもサンデー、知ってるか。海外コメではあのシーン、”Sunday Starrailed”「サンデーがスターレイル(物理)した」って言われてるんだぜ……。

と、まぁ、壮大な「スターレイル」の回収がなされ、車輪は巡り、運命も回りだしてゆくのです。ちなみに一行目で「車輪」ではなく「歯車」と訳されている理由は……もうお分かりですね。ピノコニーの伝説的な人物 ラグウォーク・シャール・ミハイル、別名「時計屋」。ピノコニーを愛した彼の心は、マスコットキャラクター「クロックボーイ」として今も息づいています。時計は歯車によって動きます。沢山の部品が調和を為して、かちり、かちりと時を進めてゆく。安穏な停滞ではなく、目覚めて、進むことを選んだ彼らに喝采を。

時を刻み、歩みゆく開拓者《わたしたち》に祝福を。


フル版であれば二番に移るところですが、ここでは公式訳が存在するEP盤を取り上げております。それではラスサビへ。「調和」を取り戻す歌に、あと少しだけ耳を傾けましょう。


Heads up! A steady rhythm

さあ 顔を上げて! 力強いリズムと一緒に

A destination that's ever near

ゴールまであと少し


destination、すなわち「目的地」。我々が目指す場所は今までに無いほど近づいている(ever near)。「忘れないで!」と暗闇の中に呼び掛けていた声も、すぐそばで「顔を上げて!」と手を差し伸べるような距離に変化しています。まるで、明けの空に射す太陽の光を、この目で見に行くかのように。永遠に続く甘美な夢こそ至高、と謳うサンデー氏に相対する陣営として、完璧なアンサー・ソングを歌い上げます。


It comes! Stride to our kingdom

私たちの理想の地へ

And see the light of day

すべてを再び光で照らそう


明日の光を手にした開拓者《わたしたち》に怖いものは、もうありません。

サンデー氏は、「自分一人だけが覚めて、人類が皆幸福な夢を見る」という理想郷を掲げましたが――――そんなものは要らない。人は、鳥は、自分の意志で羽ばたき、空へと飛びあがります。夢から覚めます。あるかどうか分からなくても、理想の未来を掴むため、朝のつめたい空気の中に踏み出してゆくのです。

それを踏まえると「理想の地」とは、おそらく「神の国」を暗示しているのでしょう。『ルカによる福音書』17;20-21において語られています。


The Coming of the Kingdom of God

Once, on being asked by the Pharisees when the kingdom of God would come, Jesus replied, “The coming of the kingdom of God is not something that can be observed, nor will people say, ‘Here it is,’ or ‘There it is,’ because the kingdom of God is in your midst.”


神の国が来ることについて

あるとき、パリサイ人に「神の国はいつ来るのか」と尋ねられたとき、イエスはこう答えた。「神の国の到来は、人々がみえる形ではなされない。『ここにある』だとか『あそこにある』とか言えるものでもない。なぜなら神の国は、あなたたちの間にあるからだ」(翻訳:R1)


kingdom of God で主の国、すなわち一神教においては「神の国」を指します。キリスト教では、世界にはいつか最後の審判がやってくると言われています。審判を経て、善人は神の国へ迎えられ、悪人はゲヘナ(≒地獄)へと落ちる。神の国は要は天国です。誰もが望む、苦しみの無い素晴らしい世界。イメージとして大体そんな感じです、細かいところはお近くの専門家にお尋ねください。

地に落ち、飛べなくなった鳥が救われないのは不公平だ――とするサンデー氏は、あまねく人々を夢の中に招き、永遠に続く甘美な楽章へと取り込もうとしました。先述した「サンデー≒主 の比喩」も踏まえれば、サンデー氏が目指した、万民が救済される理想郷は「神の国」と言えそうです

しかしこの歌では「our kingdom」をもって「理想の地」としています。さらにその「理想の地」は It comes!「来る!」だけではなく stride to するもの、こちらから歩み寄り迎えに行くものだと宣言します。stride は「明確な行き先をもって歩く」を意味する動詞です。理想は待つものではなく、自分たちで掴み取るものである。そうして、明日の光を見に行こう。

涙は、その後だ


Heads up! The wheels are singing

忘れないで! 運命の歯車は歌い出してる

The whispers and secrets they'd keep

苦痛と秘密を抱えていても

To hope! We bound~

私たちには希望がある



美しくまわり続ける時計、しかしそれを支える歯車ひとつひとつにも、錆びやきしみ、痛みや苦しみがあることでしょう。歌声の奥底には、各々が抱えるかなしみと、誰にも言えない秘密が満ちている。それでもなお、わたしたちは手を取り合い、先に進んでゆくことができるのです。

そこに希望があるからこそ。We bound to hope ――――わたしたちは「かならず」希望にたどりつく。そう決まっているのです。

bound : certain or extremely likely to happen

確実に、またはほぼかならず起こること。

訳:R1



Break free, we chased our dreams, beneath the starry night

束縛を振り切って 星空の下で夢を追いかけよう

In the face of god, we rose, as one

神の前に 力を合わせて 未来に進もう


翼の折れた鳥でも、籠を抜け出して飛び立って良い。

誰だって夢を見ても良い……たとえ幽霊であっても、宇宙を旅する夢を抱いて良い。

神のごとき存在を前にしたって、わたしたちはひとりではない。

共に、目を覚まそう。


ピノコニー。

沢山の人が積み重ねた、辺境の夢の地。宴の星。

列車は走ってゆく。宇宙へ、未来へ。

名も無い人々が組み上げた、「調和」の歌を鉄路に宿して。


神の国を、理想郷を、甘い夢を手放して、

わたしたちは現実で目を覚ます。




ここまで読んでくれたあなたに、最後にひとつ お渡ししましょう。

『翼の生えた希望』、英題は “Hope Is the Thing With Feathers”。

実は元になった詩があります。この歌とほとんど同じ、 “Hope” is the thing with feathers というタイトルの詩です。

「救済の比喩としての鳥」や「死の為に立ち止まることはできない」といった、開拓者《わたしたち》に馴染みある概念が登場します。また、作者であるエミリー・ディキンソンは当時のキリスト教と「対立した関係」にあったと言われています。

この先が知りたい? では、是非、あなた自身の目で。

どうか あなたなりの『希望』を、あなたなりの『答え』を、見つけてください。




それでは、この長い長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。

まもなく終点です。どうか、あなたの旅にも素敵な夢と、希望がありますように。


ピノコニーより、愛を込めて。



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この記事を書いたひと:R1

ピノコニーに魂を置いて来た、攻略度外視世界観没頭型プレイヤー。

調和開拓者のために限定光円錐まで引いたし、未だに夢潜を周回している。ホタル未所持。



 
 
 

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